いらっしゃいませ!
ヲタ飯屋です!
僕達料理人は「自分のお店」を持つのが夢であることが多いです。
もし他にあるとすれば有名店に勤め、そこで料理長または責任者になったりその店で働いている事に誇りを持つ人も居ます。
理想のお店は人それぞれですが、一つのお店を極めていざ独立というパターンは仕事をそのまま引っ張ったままのコピー店になってしまう事になりがちですので、もう一件、二件巡って経験を積むいわゆる「旅」を重ねる人が大部分を占めるのです。
今回は僕が会ってきた「旅人」を御紹介します!
まずは西から来た男。
僕がお世話になっていた和食のお店は地元ではそれなりにブランド力の高い場所でしたので、新卒で入ってくる人よりも「旅人」がちょくちょく門を叩く事が多かったのです。
その目的はドラクエで例えると「メタルスライム」のようなものです。
というのも、やはり厳しい環境、お店の利点としては主に二つ。
「経験値、スキルの上昇」
「自己ブランディングの強化」
言い方は強くなってしまうのですがゆるーいお店で楽しく過ごす等…最初の街の周りをグルグル徘徊するよりも、強烈に厳しく老舗が老舗たる理由を身に染みつける事が出来るメタルスライム系のお店だと時間的にもスキルアップにもコスパが全く違うのです。
あとそれに追加で
「僕は昔、~というお店で五年、後に~、~という名店で修行し遂に自分のお店を持つに至ります!」
というような自分の本当のスキルとは別に巨大な看板を数種類持つ事が出来る自己ブランディングです。
全く同じ料理内容でもお客様側からしたら、趣味で始めた人よりも名店出身の人の方が価値を感じる人が多いのです。
それを求めて「あの京都」。西から来た男…南部(なんぶ)さん。
ややこしい…(笑)
まぁそれはさておき…彼も上に挙げたものを目的でお店に来た男。
お店の料理人からしたら「あの京都」から来るらしいぞ!と来る前から話題になっていました。
僕もお店に高卒で入って一年ちょっと経った頃でしたので、右も左もわからない中、京都の職人さんの凄さは知っていました。
そんなハードルが上がりまくっている中、遂に南部さんが入店。
お店のルーティンとして開店前に魚の下処理をします。
市場から発泡スチロールに詰め込まれた物が朝来ると厨房に積み上がっているので僕みたいな俗に言う「若い衆」がバンバンこなしていきます。
ちなみに魚の鱗を落とし内臓、腹わたを取り出して血と菌を水で洗い流すまでの行程を「水洗い」と言います。
「じゃあ南部、あいつと一緒に水洗いをしていってくれ。」
親方に言われて固まる南部さん。
「実は…」
彼が固まった理由…それは「京都には海が無いから魚を触らせてもらう機会がめちゃ少ない」という地域による弊害でした。
僕は何も知らない若造でしたので、京都の職人さんは何でも出来るスーパープレイヤーとしか思ってなかったのでとても驚いた思い出があります。
僕がいた金沢と違い、彼がいた京都の老舗は京野菜、湯葉、お豆腐などの伝統料理が多く、魚は夏場にハモや甘鯛などをたまに使っていたそうで、そこの料理長やナンバー2みたいな人が水洗いをしていたそうです。(失敗できないから)
ですので、この南部さんもほとんど魚に触れること無く修行してきたらしいです。
実はこういう方は少なくないです。
京都の職人さん以外にも魚のスキルアップ目的で北陸に来る人は多いです。
静岡県の旅館の息子が料理修業で東京に行った後、経験目的でお店に来た時もありましたね。
僕と一緒に水洗いの練習をしていった南部さんは数年後、お寿司屋さんで「寿司スキル」を身につけた後に自分のお店ではありませんが、とある温泉旅館の料理長として腕を振るうのでした。
目的は人それぞれだし、料理人になるのが夢という人も間違いなくいますので、どちらが正しいなんて事は一切ないのですがゲームでも「エンジョイ勢」と「ガチ勢」がいるように多種多様です。
高級なお店が高い理由はその職人さんの「歴史」にお金を払っているというのを考えてもらえるとお店の料理も違った形で見えてきて面白いと思いますよ!
ヲタ飯あれ!!
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楽しいお食事を!!
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